「早く寝ないとおばけが出るよ」なんてもう言えない~幽霊はここにいる を観劇して~
「安部公房」「PARCO」が漠然と凄いことしか分かっていない、演劇の知識など無いに等しい私。
予習無しで大丈夫なのだろうか…と不安になりつつも、結局白紙で観劇することに。
結果、ストーリーとしてもエンタメとしても、めちゃめちゃ面白くて、後からじわりじわりと込み上げてくるものがあった。
・神山くんだからこそ成り立つ深川という役
まず序盤に感じたのがこれ。
目に見えない幽霊を連れて歩いている、目に見えない幽霊と対話している、その姿はやはりおかしなもので。
劇中の人物達と同様、観客の私も当たり前に受け入れられないし、正気か?いや正気じゃないな、と思った。
でもそんな周囲の反応なんてお構いなし、幽霊が存在して当然のごとく振舞っている。
これは少々オタク目線で書かせてもらうのだけれども…
真面目という病気だと言われるほど、いつも何事も本気で挑む。それゆえにボケや演技もどこまでも真面目で本気なのが面白い。そんないつもの神山くんの良さが活かされていたように思う。
ちょっとでも迷いがあったら成り立たない、ただどこか様子のおかしい危うさも含んでいる、純粋で固い信念がある深川という役。
何を言っているんだ?大丈夫か?この人と幽霊はどうなってしまうの?と目が離せなくなるような人物を、見事にお芝居で成立させていて素晴らしかった。
・神山くんの歌とダンス
神山くん無双タイム「戸籍の歌」。どうやら戯曲にはないオリジナル曲だそうで。
思いのほか振りの雰囲気がジャニーズっぽいというか、普段から見せていただいているダンス達の延長線上のように私は感じた。(異論は認めます。)
少数派かもしれないけど、私はあえて”神山くんらしさを魅せる”パフォーマンスにしたのかなと解釈した。
深川にしては、色気たっぷりだしバキバキだし関節の動かし方半端ない…。
そして歌も音域が低めだから、化粧水ボイス×色気の相乗効果が半端ない…。
いやあ、ファンにとってもスペシャルな時間だし、神山くんを初めて観る方にとっても「そうだ彼はジャニーズ事務所の歌って踊れるアイドルなんだ」と認識する時間になりそう。
新たに曲が作られここに組み込まれたという事実だけで嬉しいし、ジャニーズタレントへのリスペクト的なものを私は勝手に感じました。
・生演奏に大興奮~目と耳が足りない~
開演前から下手奥にセッティングされていた、鍵盤楽器と打楽器の要塞。
ラッキーなことにそれらがちらっと見える席で観劇することができた。
演奏しておられるのはたったお二人。オルガンやアコーディオン、トランペット(ファンファーレ素敵だった)、そして様々な打楽器。
創り出される音が物語に寄り添ったりスパイスになったり、その多岐にわたる表現方法に惹き付けられついつい聴き入ってしまい、一部台詞が入ってこなかった場面もある。まさに目と耳が足りない!状態。
前述した神山くん無双タイムの歌&ダンス曲。ここの打楽器、ドラムセットを叩いてそうな曲調なのに、なんとバスドラムを足で踏むのではなく締太鼓(?)を叩いておられた(はず…色々違ったらすみません)ことにびっくり!
この締太鼓の音がとにかく好きで。もう記憶があやふやなんだけど、ミサコが大きな声で話す場面を勢いづけるように「ドンッ」と心臓に響くような音を発したり、悪天候や戦争の場面の重低音を担っていたり、やっぱり生の音ってぞくぞくするな。
あと、八嶋さん演じる大庭がそろばんをシェイカーのように鳴らして音楽に参加している演出も好きだった。
キャスト陣のコーラスと共に舞台上を練り歩くアコーディオン&タンバリン、リコーダーの重奏、などなど、他にも沢山見応え聴き応えのある演出でブラボーでした!
・見立ての多い素朴なセット
大掛かりなセットはなく、ステージの中央一帯に広がる砂、それを囲む白いカーテン、時間の経過と共に変化する吊るされた照明。
ステージの端に置かれた踏み台(かな?各家庭にありそうなごく普通の踏み台のように見えた)をよっこいしょと登って「海だ~!」と言うもんだから驚いたよ。あれ崖?石段?見立てがすけげぇ。
看板や机もあえてキャスト自ら動かして演出の一部にしていて沢山笑わせてもらった。仮にハプニングがあってもどれがアドリブなのか分からないくらい。
舞台上に広がる砂については
・アイディア次第で様々な表現が出来る面白さ
(砂を掘り起こせば赤色の床が出てくる。それが幽霊服ファッションショーのレッドカーペットや、頭痛と同時にフラッシュバックする戦時中に流れた血、等になるのがすごい!)
・砂に足を取られつつも今をもがきながら生きる戦後の人々
・さらさらと形にならない虚無感
こんな感じのことが頭に浮かんだ。
稽古の過程で試行錯誤されながら作られたのが伝わってきた。
・八嶋さんとまりゑさんに救われた
エンターテイナーな御二方の、まあ魅力的なこと!歴史のある作品をここまで取っ付きやすく楽しく盛り上げて下さったおかげで教養のない私でも楽しく観劇できたように思う。
まず八嶋さん演じる大庭。人殺しの詐欺師、戯曲だけ読んだらものすごい悪党のように思えそう。
でも憎みきれない、ダークな役に振り切っていないのは、八嶋さんの力なんだろうな。
材料費や制作費ではなく、人が金を払うかどうかで価値が決まる。この言葉にはハッとさせられた。
そして、まりゑさん演じるモデルの女。アイラブ幽霊!可愛くて色っぽくて、歌も表現力に圧倒された。
結婚と市長選を巡って揺れ動く舞台上で、突如始まるワンマンショー。やばい。
そしてこの能天気そうなモデルの女が、幽霊が居なくなった後に「居ることにすればいいじゃない」「この幽霊さんも市長になりたがっている」と言い放つもんだから、やばい。
見えないものの力を信じる人達が増えることでどんどん高くなっていく価値。これこそ幽霊より恐ろしいものだと思ったけど、観劇中は楽しい演出も多かったから今になってじわじわ怖さを感じている。その辺の塩梅も絶妙だったんだなぁ。
・箱山とミサコ、そしてラストシーン
皆が幽霊にフィーバーしている中、俯瞰的に見ているのが箱山とミサコ。ただ、箱山は端から信じていない。ミサコは深川を幽霊から救いたい。両極端な2人。
幽霊商売で経済を回している人達とは違って、ミサコは「幽霊さんに席を外してもらえない?」など、次第に幽霊を肯定するように話していたのが印象深かった。
ミサコが箱山に、深川が幽霊と出会ったきっかけ(戦地で水筒の水を取り合った結果亡くしてしまった友人=幽霊)を話した時の
「戦争ってのはそんなもんだ。ただ大抵は忘れてしまう。」この箱山の言葉は何気ない台詞の一部かもしれないが、今も頭にこびりついていて、記憶の風化の恐ろしさを痛感している。
この言葉はラストシーンでも蘇ってきた。
死んだと思っていた友人は生きていた、めでためでたし…ではなく、
その後も続く目に見えない幽霊商売、そしてそれらをも焼き尽くす戦争の場面へと転換する。
全ての人や物が崩れ落ち、セットの白いカーテンは赤黒く染まり、爆撃音が鳴り響く。そのまま終幕を迎える。
ただの昔の話では無い。記憶を風化させてはならない。今もなお続いているのだ。と、現実を突き付けられたようなラストだった。
・最後に
幽霊やおばけは、物心ついた時から「こわいもの」だと刷り込まれていた気がする。
我が子達も「早く寝ないとおばけが出るよ」と言うと慌て出す、就寝前にたまに出る脅し文句…。
私自身、今まで幽霊を見たことがなく深く考えたこともなかった(霊感もなく興味もなかった、ごめんなさい)が、今回観劇して親しみやすくなった。
戸籍登録の順番待ちや、重なってぎゅうぎゅう詰めになりながらの式典参加、愛しささえあった。
目に見えないものに囚われ続けることは色々な意味で恐ろしさがある。
しかし、死者の存在に寄り添いその記憶を風化させず大切にすることは、恐ろしさどころか尊さもあると思う。
「早く寝ないとおばけが出るよ」
なんて、もう言えないな。
舞台 幽霊はここにいる、完走おめでとうございます!
この物語の行く末は ~閃光ばなしを観劇して~
幕が上がって数分の第一印象
「超うるさい!最高!」
ソーシャルディスタンス、飛沫防止、黙食、リモート…
まだまだ人との接触は最小限にとどめている日々。
その静かな日常に慣れつつある今、目の前で大人数がやいのやいのぶつかり合う姿に、昭和という時代とは別の意味でも懐かしさを感じた。
人って本来はこれくらい熱いものなんだよな、と思い出させてもらえたような。
そんな大人数が動き回る舞台上では、細部まで追うには目と耳が足りないくらい色々な事が起こっている。
コメディ要素満載の小ネタの応酬に笑いが止まらない。テンポが良くて面白くてクスクス笑える。
そしてそのやり取りの中には、笑えないくらい重い現実的な台詞も要所要所で盛り込まれている。
重いからこそコメディ色を強くさせている気もするし、ギャップで引き込ませているような気もする。
妹の政子。自分のことが嫌いだから今の状態でとどまっているなんてまっぴらごめん。
「プラスでもマイナスでもいい、ゼロから離れて生きていたい」の言葉にもそれが感じられる。
とんでもない発言や行動をするけどそこに迷いがなくて見ていて気持ちいい。
無鉄砲なようで、とても冷静に物事を捉えて考えている。
それが強さでもあり、寂しい部分でもあると思った。
両親を先立たせてしまった自分なんかは幸せになってはいけないのだ…と、自身の心を殺してしまっているからこそ、これだけ俯瞰的に考えたり勢いよく思い切れたりするのかもしれない。
でもラストの踊りの場面では、自分が踊ることで周りの誰かに希望を与えていることに気付いていた(幼少期思い出していた)のかな。そうだったらいいな。
黒木華さん、声がめちゃくちゃ通る、めちゃくちゃ聞き取りやすい!
あの大人数の大騒ぎの中でもまっすぐ飛んでくる、そんな綺麗な声で現実を突きつけてくる。
お兄ちゃんの是政。逆境に立ち向かう正義感の強い熱い男、なんだけれども、妹愛が激強でまるで片思いの男子のようにおどおどする場面もあったりで(回りくどい!by政子)、いい意味でちょっとふわっとしていて、劇中に変化していくキャラクターだなと思った。
そのふわっとした部分に安田さんご自身の人間性のようなものも乗っかって愛の人格者・是政が完成しているようにも見えた。
なので今回の是政からはいわゆる憑依的なものはあまり感じられなくて、等身大の安田さんな部分もある?のか?口の悪さとかは別だけど。うーん上手く言えない。
登場人物について語りだしたらキリがない…だって皆が主人公のようなお話なので…ということで中断。ちなみに好きなキャラは、是政に様々な気付きのきっかけをくれるお父さん、ぼっちゃんへのまっすぐな忠誠心が美しい加古さん、庶民と権力者の間で奔走する底根さん、です。皆好き。
ここからは特に印象深かった台詞等について書き殴る。記憶があやふやなので全てニュアンス。
「全速力で迂回せよ」
「急いで辿り着いても待っているのはクソだ。クソの中で長居することになる。でも遠回りしていられないのも青春(だっちゃ?)」
渡し船事業に苦戦中の是政に、お父さんが助言する場面の台詞。
お父さんの考え方…総じて好き…。私的1番の推しキャラかもしれない。
ゴールに早く辿り着くことだけが正解ではなく、その過程が大切。人生回り道もいいもんだよ、と私まで背中を押された気がした。
そして常に「クソ」は付き物というか、そんないい事ばかりの日々じゃないんだよね。どの時代もきっとそう。クソの中でもがいている途中で時々感じられる喜びとか幸せとか、そういうのをまずは大切にしたいと思った。
「見て見ぬふりをさせてくれ」
どん詰まりの住人たちの過半数が橋の建設を手伝い生計を立て始めた頃のやり取り。おそらく焼肉屋の旦那・柳の台詞だったはず…。
ニュアンスでしか覚えてないけど「これでもそこそこの生活はできる」的なことも言っていて、まさに昭和も今の時代も変わっていない現実なのでは。
政子の「街は自分たちで作っているのではなく、権力者が作っている牧場。私達は搾取されている。」この言葉も耳が痛い。
是政のように立ち向かっていく人になりたくても簡単にはなれない、どうすればいいか分からない。
でも自分なりに今を生きるために選んだ道がこれなんだよね。
私含め、観客にも同じような気持ちで生きていて共感している人は沢山居ると思う。
そんな気持ちを置いてきぼりにせず掬い上げてくれる場面だった。
「悪知恵でも知恵は知恵」
「生きる必死さで私達は負けている」
劇中の最大の敵・野田中のことを悔しいながらに讃える台詞。
一方の野田中自身は、権力者ゆえに憎まれる辛さやいつか覆される恐怖を吐露している。
悪役・敵役でも一人の人間としてバックグラウンドが描かれていて感情移入してしまった。
会長に辿り着くまでの苦悩、辿り着いてからの苦悩、常にもがきながら必死に生きているのは同じなんだよな。
B作さん、おじいさんなんだけど舞台役者さんとしてしっかりおじいさんで凄い。(語彙力皆無)(伝わって)(伝わらん)
「みんなって誰?」
「みんなに私は入っていないってことね?」
由乃お嬢様、加古さん、是政……終盤に複数人から発せられる"みんな"という表現。
"みんな"とは?観劇して自身に問い掛けた人は少なくないはず。
みんなのためにやろう、みんなで一緒に頑張ろう、とか、そんな言い回しを幼い頃から真意はよく分からないまま教えられてきた気がする。
そして大きくなるにつれて、みんなのためにという表現がどこか正義のヒーローじみていてちょっとしんどいなぁそんな風に感じるのは私の心が汚いからかぁ、などと思うことがあったり。
でも元を辿れば、結局自分自身のためなのでは?と観劇後に考えさせられた。
自分のために、自分が大切だと思う周りのみんなと関わる、みんなのことを考えて行動する。
これくらいシンプルでありたい、そう思うとなんだか心が軽くなった。
その思考に行き着くまでにハッとさせられたのはまたしてもお父さんの回想シーン。
土方の人達のためにお店を開いたお父さん。でもその原動力は自分が街のみんなに笑っていてほしいからで。「暗いのは無し!」と笑いながら話していたのが印象的だった。お父さん、やっぱり好きだな。
最後に、ラストシーンの自分なりの解釈を。
バイクで飛んでいる時に星の話をしていた政子。自分も死んでその星になろうとしていた?でも飛ぶ提案したのは政子だしな…。
是政はバイクの性能を信じて生きて降りようとしていた?
(分からない…腑に落ちる解釈迷子)
そして電柱守と立ちんぼと政子の会話と踊りで静かに幕を閉じる。是政は姿を見せないまま。
えっ!ここで終わるのか?!と衝撃だった。
観客が解釈を委ねられた結末。
裁判は勝ったのか?負けたのか?是政は帰ってくる?逃亡した?生きている?
ぐるぐると考えた末、私は「物語の続きは観客の人生にある」という解釈に至った。
以前、テーマが重めのとある作品がハッピーエンドで完結した時、報われて良かったなぁと思う反面「私の人生はハッピーエンドになるのだろうか…」と現実とのギャップに気持ちが置いてきぼりになってしまったことがある。
閃光ばなしが、もし華々しいハッピーエンドだったら…同じような気持ちになっていたかもしれない。
そういう意味でもこの余白の多い結末はとても秀逸で、劇中の人物達と共に物語の続きをもがきながら生きたいと思わされた。
昭和三部作は形式としては完結したのかもしれないが、今後も自身の中で間違いなく生き続ける作品になっている。
まだまだ不安定なご時世にも関わらず、エンタメを通してパワーを届けてくださるカンパニーの皆様、いつもいつもありがとうございます。
どうか千穐楽を笑顔で迎えられますように。
人生と向き合った100分間 ~LUNGSを観劇して~
※個人的な話も沢山出てきますのでご注意下さい。
LUNGS観劇前の気持ちを一つ前の記事https://dadadawest.hatenablog.com/entry/2021/11/06/125510に書いた通り、私は成り行き任せで妊娠出産をしてしまった人間なので、子を持つか持たないかを真剣に話し合う二人に喝を入れてもらうつもりだった。
だがしかし、まさかまさかの展開にびっくり仰天。
彼らもなかなかに成り行き任せの波乱万丈な人生だったので。
どうしてあんなに難しいことまで語り合うのに、セックスはしてしまうのだろう。
でもその本能的で愚かな部分が人間らしくて、お互いを純粋に好きな証拠でもあって(世の中にはそうでない理不尽なケースもあるから全肯定はできないが)、ある意味運命的なものでもあるのかな…なんて、私自身が都合のいいように受け取らせてもらった。
愛しき二人の人生を通して、悩んでいた自分の背中を押してもらえたような、これから立ち向かうべき課題を提示して貰えたような。個人的にはとても救われた気持ちだ。
もっと若い頃に観劇していたらどんなことを感じたんだろう。本当に、観る人や観る時期によって、かなり変わってくる作品だと思う。
(以下、まとまらない殴り書き感想はこちらに置いたままになっています。https://fse.tw/eMWk1IAH)
観劇された方が「舞台の感想のはずなのに、なんだか自分の話になってしまう…」と呟いていたり、パーソナルな部分も交えた感想を書かれていたりする。
そうなってしまうのもこの舞台の魅力の一つだと私は感じる。
雑誌のインタビュー等で
「1から10まで伝え切るのではない」
「70~80パーセントほどしか説明しない」
「観客の想像力で解釈してもらう余白も残している」
「100人いたら100通りの考えがある」
(※すべてニュアンス)
と神山くんは語っておられた。
その余白に自分自身を投影してしまう人も多いのかな。少なくとも私はそうだった。
この舞台が、セットも衣装替えも音響照明もがっつり世界観が固められていたら、そうはならなかったように思う。
素舞台ならではの余白に、自分自身のあれこれが入り込んでいく。
ただ余白と言っても、セリフや場面転換は超高速。あのテンポ感だからこそ、自分がぐさぐさと刺さる部分が際立ってダイレクトに飛んでくる気がする。
なるほど、これが観客も一緒に舞台を創っていくということか…と新鮮な感覚だった。
二人の男女の人生と、自分の人生とに向き合った100分間を、私はこれからも大切にしていきたい。
神山くんを応援する過程でLUNGSという衝撃的な作品に出逢えたことを本当に嬉しく思う。
神山くん、奥村さん、谷さん、スタッフの皆さん…チームLUNGSありがとう!千穐楽まで完走、おめでとうございます!
子どもを持つかどうかを考える前に持ってしまった話
※これはLUNGS観劇前のメモです。私自身がネタバレやレポには触れていない為、舞台の内容とかけ離れたことを言っているかもしれません。個人的な話が多いので嫌な気分にさせてしまうかもしれません。また「丘の上、 ねむのき産婦人科」の感想も交えています。LUNGSを無事に観劇出来た際は感想を改めて書けたらと思っています。
舞台 LUNGSの幕が上がりました。おめでとうございます。
まだまだ厳しい情勢が続く中、エンタメを届けて下さることに感謝しております!
私は子持ちの母です。神山くんの初単独主演舞台が「子どもを持つべきか」という大変興味深いテーマということで、観劇前にも関わらず自分が子どもを持ったことについて改めて考え続けています。
良いイメージを持たれないかもしれませんが、「子どもを持つべきか」という問いを考える以前に授かり、結婚を決めたので、正直向き合ったことがない問題でした。
結婚・出産には漠然とした憧れがあり、出来るならしたい、幸せになれそうというイメージは持っていました。なんとも浅はかな私です。
今になってから思います。生まれてくる子どものためではなく、自分のために出産したのだと。
LUNGSの演出 谷賢一さんのツイートから「丘の上、ねむのき産婦人科」という作品を知り、配信にて観劇しました。
(12月末まで再配信もされています)
https://www.dcpop.org/vol23-rs/
LUNGSきっかけではありますが、経産婦として純粋に観てみたいという気持ちでした。
ねむのき産婦人科に通う複数の男女のエピソード集で、実際の取材に基づいて作られた作品のため、リアリティに溢れていて終始泣きながら観ていました。
予期せぬ妊娠に対してなんとかすると言う男と経済的に苦しい現実に絶望する女の考えの差、
妊娠、産休、育休によりキャリアが絶たれ自由に働けなくなる女の悔しさ、
妊娠中の夫婦が空想で旅行する時、子どもがついてくることを想定できる女といまいちピンとこない男の差(この話、可愛くて一番好きでした!)
他にも様々なエピソードに共感し、自身の色々なことを思い出しながらの2時間でした。
なにより、男女の感覚の差をひしひしと感じ、自分も夫ともっと向き合って対話していかないと分かり合えないな…と反省しました。
考えの違う他人同士が一緒になって子どもを産み育てるって、深いなぁ。きっかけとなる行為自体は簡単に出来てしまうからこそ、恐ろしいと思いました。自戒を込めて。
また、エピソードの中の一つとして出てくる、反出生主義という考えは新たな学びでした。
今のこんな世の中に子どもを産み落とすのは酷い、親に愛されたことの無い自分は子どもを愛せない、という理由で子どもを産まない方がいいと考える女性とそれでも君との子が産みたいという男性のカップルの話(要約下手でごめんなさい)です。
漠然とした願望だけで妊娠して結婚して出産した私…特段子どもが好き!というタイプでもなく、実際うまくいってないなと思うところだらけの毎日…。
将来自分の子が「生まれて来なければよかった」と思うようになるんじゃないかと考えたり、そこまで子の未来に責任を持って出産してないことを反省したり、自分の視野の狭さに落ち込みました。
沈んでいてばかりでは意味が無いので、ここで感じたことを胸に刻み、現実と向き合っていかないとなぁ…。
LUNGSに関して、G.O.Diaryや谷さんのツイートから、様々な社会問題も絡んでくることが伺えます。
「子どもを持つべきか」の選択をしないまま子どもを持ってしまった自分が、この作品に出会うことで新たな考えに触れ視野が広がることを嬉しく思います。
あれこれ書きましたが、我が子は本当に可愛くて大切な存在です。
神山くんの挑戦、カンパニーの皆様によるLUNGSワールド、楽しみにしています。
どうか千穐楽まで完走出来ますように!
いつの時代も変わらない、家族ゆえの難しさ ~「夜への長い旅路」を観劇して~
約一年振りの舞台観劇。2階席なのに双眼鏡を忘れるという大失態をしでかし表情など見られず…それでも心を揺さぶられることが多過ぎたので、感じたままに走り書き感想を残すことにした。
舞台は、セットの転換が無く、一家の別荘での一日が会話メインで進んでいく。
その中で個々の過去話等も語られるから、とにかく台詞量が凄まじかった。長台詞の嵐!もっと予習していけばよかったな…。
そんな構成だからこそ、ママ役の大竹しのぶさんのセリフの聞き取りやすさと表現力が圧倒的だった。
ヤク中ならではの情緒不安定さを表現しながらしっかりと言葉を伝えるのは、しのぶさんの女優の経験値そのものだと感じた。
偶然にもお誕生日公演に入らせてもらえて、御歳64歳だと知りなんてパワフルで可愛らしい方なんだと更に驚いたよ。改めて、おめでとうございます。
シンプルなセットの上空に開演前から吊るされ、時に揺れたり部屋を覆ったりする白い布。
それが場面に合わせて、霧・海の波となり、ラストにはウェディングドレスにまでなってしまう演出の発想に度肝を抜かれた。
また、ジェイミーがピアノに触れるシーンのBGM。稽古中に大倉さんが偶然弾いた和音を元にして作られていた事を公演後にパンフレットで知ってびっくり。本当に弾いているように見えたのはそういう事だったのか…なんと素敵な制作秘話。
ストーリーに触れていく。
メアリー(ママ)は、役者として各地を飛び回る夫ジェイムズ(パパ)の生活に寄り添いつつ、孤独な出産と育児を乗り越えるのに必死になるあまり、長男ジェイミーが次男の命を落とす事故を防げなかった。
そして亡くした子を忘れようとエドマンドを出産したが、産後の肥立ちが悪く薬を処方されそこから依存が始まる。しかしケチなパパはお金がかかるからとママの薬物依存を治療する努力をしなかった。
そもそも次男を亡くした事故は巡業中のパパがママを呼び出し子ども達から離れた時に起きたのだから、元凶はパパお前じゃないかと私は思ってしまったよ。とにかく序盤はママに同情した。
家庭は二の次で妻に全てを任せてる夫、今の世の中でも沢山居るんじゃない?現代で俗に言うワンオペ育児に近い部分もあるのでは。
1幕の終盤、夫と息子達の外出中に想いを女中に吐露するママ…観ていてとても苦しかった。
(余談だが、うちの夫は子守りを頼んでも子ども放置して寝てたりするので、その間にもし何か事故が起こったら…私はどうするだろうな…ははは、笑えない話)
更にパパときたら、結核をを患うエドマンドの病院選びも安さ重視で選ぶんだもの、息子の命より大切なのはお金なの?
2幕でエドマンドが感情剥き出しでパパを責めるシーン、いいぞいいぞもっと言ってやれの気持ちだった。
でもパパがケチで金の亡者だったのには幼い頃貧しかった過去も絡んでいて…確かに可哀想ではある、けど、私はパパに同情しきれなかった。
だがしかし、エドマンドはパパを哀れむのよね。家族を嫌いになりきれないのってこういうことなのかな、なんて思った。
大倉さんがwebで「愛してあげて下さい」と言っていた兄ジェイミーについて。
下の子が生まれたら上の子は思ったように構って貰えず寂しさから嫉妬する、というのは兄弟育児あるあるとも言える話。
ジェイミーもまさにそれで幼い頃から両親の愛に飢えていた。
パパの協力も得られず宿を転々とする中で孤独に子育てをしてたのだから尚更ママに構って貰えなかったんだろうな。
そして7歳の時に弟(1歳くらい?)の部屋にわざと入って麻疹をうつして死なせてしまい、ずっと恨まれ続ける。さすがにこれはジェイミーが可哀想。
部屋に入ったのは確かに悪いけど、まさか本当に死ぬなんて思わなかったはず。
まだ7歳なんだし、ちょっとママの気を引こう、という軽い気持ちでやったのでは?
ママも既に日々の生活に参っていて限界を感じていて、その後もずっと落ち着いてジェイミーの気持ちを考えられなかったのかな。
(さっきも書いたが、次男を亡くす事故は巡業中のパパがママを呼び子ども達から離れた時に起きた訳だし、大人の責任も大いにある。)
亡くした子の代わりにエドマンドを産み育てるという発想もしんどいし、その事実を知った上で兄弟は仲良く出来るの?と思った。
ジェイミーは酒と女に溺れ、ひねくれたことばかり言う。
それでもパパから貰ったお小遣いを半分兄にあげる弟。酒代に消えるのになんと優しい…。
ジェイミーも、結核を患う弟が飲酒しようとした時に心配したりと、兄らしい姿も見られる。
そして「俺に近付くな。用心しろ。」と、言い方は滅茶苦茶ながらに弟を思うジェイミー。
弟を愛してるからこそ、どうしようもない自分から離れた方が良いと言っちゃうの…苦しいな。
エドマンド(実際はユージーン)自身が綴った話だからこそ、彼の記憶の中の優しい兄像が感じられたようにも思う。
大倉さんと杉野くんのぶつかり合うお芝居、引き込まれたよ。
最後に。
タイローン家は不幸が重なり狂ってしまった家族のように見えるが、どこの家庭でも歯車が狂うきっかけは日々に沢山落ちていると思う。だから他人事には思えなかった。
各家庭が抱える諸々の問題は正論ではどうにもならないことだらけ。でも大切な家族のことだから向き合わなくてはならない。大切な家族のことだから願望が大きくなる。
全てがうまくいっている家庭なんてあるのかな。
私自身まだ家庭を持って数年なので、家族とはどうあるべきものなのか手探りで日々もがいているが、うまくいかないことだらけで苦笑いの日々。
なので、ママが結婚する前のシスターになりたかった夢に逃げるように依存する気持ちもなんとなく分かる。
解釈違いかもしれないけど、一幕でパパとママの馴れ初めを当時のときめきを再現しながら語っていたのを観て、ママは結婚そのものに憧れていたようにも感じた。(そこも私自身と似ていて痛かったりする…笑)
でも結婚を決めた時、幸せは確かにそこに有り、その後も幸せはずっと願われ続けていたのよね。
一家がいつどこをどうしたらよかったのか、理屈で語れるほど簡単なものではないよな…。
タイローン家のこの話を通して、私は哀れんだというよりは、家族はやはり難しいものだと改めて思い知らされた気分。
みんな愛を持っていて、ぶつかったり寄り添ったり、一生懸命生きているはずなんだけどなぁ。
咀嚼しきれなかった台詞も多々あるので、もう一回観劇したらより家族一人ひとりの愛を感じる事ができたのかもしれない。
ノンフィクションだからこそ、もっとタイローン家のことを知りたいと思った。
色々と制限されるこのご時世に全40公演の完走、本当にお疲れ様でした!
『KNOCK OUT 』しがんでます
「やる前から無理とか言って逃げても変われねえぞ」
ここを聴いて思い浮かんだのが
「やってもないのに無理って言わない!!
自分に限界を決めない!!
それが俺のポリスィ~👍✨」
WESTVのグッズ「プロフィール交換して帳」
(所謂昔流行ってた友達に書いてもらって集めるプロフィール帳)
(なかなかパンチ効いてるグッズ)
こちらの神山さんのページで書かれていた言葉です。